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精神哲学に貫かれた「悠久」の経営 




カルマ(業=Karman)とは、
人間の死後の運命を
決めるものは

生前の行為いかんによるという
因果律の思想である。

カルマのくわしい概念は、
ウパニシャッドの時代には
まだ完全には確立されて
いなかったが、

その定義はすでに
明示されている。

 『人は〔この世において〕
なしたとおりに、
その行なったとおりになる。

善をなす人は善となり、
悪をなす人は悪となる。

善業によって善い者となり、
悪業によって悪い者となる』

(『ブリハッドアーラニヤカ・
ウパニシャッド』Brhad. Up. IV,4,5)

その人の行なった行為は、
現世のみならず来世の
自分にも影響を与えていく。

そのカルマを運んでいくのは
魂=アートマンである。

私たちの魂は世代、
時代を越えて次々に
生まれ変わっていく。

死ねばすべて終りではなく、
魂の再生によって、
カルマも次世代へと
引き継がれていくのだ。


 「経営の魂」「経営哲学」も
この例外ではない。

れらは次世代へと引き継がれる。

よい経営をした経営者の会社は
次世代にも栄えようし、

自分と自分の会社さえ
儲ければそれでいいと
エゴむき出しの経営者と
その会社は、

必ずそれ相応の報いを
受けるのである。

経営は一代限りの
ものでないことを、
経営者は己の心に
銘記されたい。

儲け第一主義から脱し、
人間尊重と社会貢献を
視野に入れた経営を
成すものは、

次世代の経営も善業となり、
己と子孫の魂も向上
するのである。

松下幸之助氏や
本田宗一郎氏などと
同時代に生き、

ヤング・ライオンズと称された
企業家の一人に出光興産の
故出光佐三氏がいる。

出光氏は家業の没落から、
名門校を出ても丁稚奉公に
等しい商売に就かねばならない
苦労をなめた。

その間、人から軽んじられ、
裏切られる経験も何度かした。

だが彼は、
意地と信念を持って
出光興産を興し、

その経営哲学の
根本にすえたものは
「人間尊重」の理念であった。

具体的には、
首切りや定年制を行わない
とする経営方針である。

出光氏が
人間に裏切られながら、
人間尊重の経営を
とりえたのには、

彼を育てた母親の強い愛情、
卒業校の校長をしていた
恩師から「無私の愛」と
もいうべき教育を
受けたことなどが背景としてある。

これらの「愛」が
出光氏の潜在意識下に
「善意のカルマ」となって積まれ、

魂の陶冶と人格の向上を
促したわけである。

それが人間尊重という
「愛」の経営を可能にした
主要因なのである。
(次回へつづく)

(拙著:『リーダーの精神哲学』 1997年発刊 より)

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